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トップ > ビーグル > ビーグル - 人気ブログ(Blog)検索結果詳細 (2008年10月10日 5時)
諸君 私は博物館が好きだ
諸君 私は博物館が好きだ
諸君 私は博物館が大好きだ
…と突然ヘルシングネタではじめてみるテスツ。
テンション高いのは1週間の出張が終わって酒が入っているせいです。
実は今日ニュースサーフィンをしていてこんな記事を読んでから、久しぶりに博物館巡りをしたくてしょうがないのですよ。
というよりも、収集癖なんて無いはずなのに物欲が疼いてたまらんという。
@nifty:デイリーポータルZ:ミュージアムショップが大好きだ
家に博物館みやげが並んでいる。恐竜のミニチュア、レプリカ土偶、鉱石、水族館トランプ。
博物館を見て、その興奮のままに帰りに売店で買ったものだ。ときどき眺めてホクホクしている。そこでしか売ってないし、珍しい。なにしろ博物館で売ってるぐらいだから絶対いいものに違いない。
ふだんは「もしかしたら100円ショップに同じものがあるかも」とか「かさばるから帰ってから通販で買えばいいじゃん」などと疑り深いことばかり言っているのに博物館みやげに関しては超ポジティブである。
ポジティブすぎて「大好きだ」なんて記事タイトルをつけてしまった。恥ずかしい。しかし大好きなので3ヶ所回ることにしよう。(林 雄司)
巡る先はいずれも東京の博物館で、
・国立科学博物館
・日本科学未来館
・こどもの城
の三箇所なのだが、各博物館のミュージアムショップで売っているもののピックアップが凶悪なまでにツボを突いてくる。
記者はなかなかやるな。
写真は元記事に載っているのでそっちでじっくり見てもらうとして、
たとえば科博の海洋堂謹製カプセルミュージアムなんかはさすがのクオリティだし、一枚一枚に異なる生物種がフルカラーで載っている科博トランプなんて古細菌や真性細菌、原生動物がきちんと分けてあって通にはたまらんですよ。
科学未来館の磁性流体やDNA抽出キットも捨てがたいし、意外性にやられたのがこどもの城のおはなし迷路。
ずっとこの迷路を見ている子供がよくいるというが、さもありなん。私も年甲斐も無く「欲しい!」と思ってしまった。
どのみち次の博士ミーティングを東京でやるので近いうちに向こうに行くから、そのときは有給使ってでも博物館巡りをしてくることに決めた。
とりあえずこの週末は地元の博物館でまだ行ったことが無いところにでも行ってみようと思う。
作者:黒影
更新日:2008年10月11日 0時6分
きくちゆみが立教女学院高等学校で911陰謀論の講演をしたらしい
各種トンデモ方面の活動家として有名なきくちゆみが、立教女学院高等学校で911陰謀論の講演をしたらしい。
事の顛末が本人のブログにアップされていたんだが、あまりの内容に頭痛がしてきた。
立教女学院高等学校には相当度し難い教師が存在するようだ。
きくちゆみのブログとポッドキャスト: 高校生のみなさんへ――立教女学院で「911とつくられる戦争」を講演
10月4日、立教女学院高等学校で600人の女子高生に講演をしてきました。すごかったんです!反響が。
最初、寝ている生徒たち(かつての自分自身みたい!)もいたので、あまり興味がないのかな、と思いながら、「911とつくられる戦争」を映像と使いながら90分間お話しました(このテーマは、なんと学校側からの指定)。
「このテーマは、なんと学校側からの指定」という部分は重要なので強調しておこう。
私は彼女のような「川を渡っちゃった」者よりも、その周囲でそれを誉めそやす人間のほうが、何倍も度し難いと考えている。
特にこんな風に教育者としての立場を利用して、生徒に陰謀論を布教するような輩はな。
講演が終わると、わたしのいる校長室に泣きながら1人の生徒が入ってきて、その数がどんどん増えて、質問攻めに。最後にはなんと「サインしてください」ですって!彼女たちの質問には全部ていねいに答えて、911真相究明国際会議のフライヤーを渡してきました。
これを読んでまた観測先が増えそうだとウォッチャーとして冷静に考える自分と、また陰謀論に染められて道を誤る人間が出るのかと悲しむ自分がいる。
ミッション系の女子高とはいえ、こんな風に人の話を簡単に信じすぎちゃって大丈夫なのかね?
きくちゆみを呼んだという教師のコメントなんて、素晴らしすぎて泣けてくる。
わたしを招いてくれた先生は、「これが公立学校だったら、決してできてない企画。クビになるでしょう」と話してくれました。「うちの学校では何を話してもいいですからね」とも。日本の高校でわたしがこんな話をできるなんて、何か素晴らしい変化が起きています!
確かに私立学校は教育内容の自由度が高いが、その分「何を教えるか」に対する評価はダイレクトに返ってくる。
きくちゆみへの対応を読むかぎりでは、どうも学校側がこの点をきちんと認識できているとは思いがたいのだが、「全校生徒に学校の肝いりで911陰謀論の講演を受けさせる高校」に対する社会的評価がどういうものなのかは、これから十分に理解することになるだろう。
「うちの学校では何を話してもいいですからね」と発言したらしい教師は、果たしてそのとき学校からかばってもらえるのかな?
すこし本論からは外れるが、きくちゆみの書いている以下のくだりは、私も少しは理解できる。
わたしが911事件のことを追求しているのは、これを理由に今も対テロ戦争が続けられ、無実の人たちが殺されているからです。犯人を暴いて、その人たちに復讐したい、とかではありません。ただただ、嘘で始められた戦争を止めたいからです。
911事件の闇に光をあて、すべての人に真実が行き渡り、もう戦争を選ばないような地球社会にしたい。戦争するより、助け合う方がいいよね。わたしたちは殺し合うために生まれきたのではありません。だからサインにはLove&Peace(愛と平和)と書きました。
アメリカが9.11を戦争をはじめる格好の口実として利用したというのは事実だ。
私も当時アメリカの無軌道な戦争拡大を批判していた一人なので、Love&Peaceな人達が「もし911がなければ戦争は起こらなかった」とばかりに911陰謀論に飛びつきたくなる気持ちはわからないでもない。
しかし、それこそが罠なのだ。
911は実際にアルカイダのテロだし、WTC崩壊の原因は飛行機の衝突だ。
陰謀論に飛びつくのは、むしろ反戦運動の足を引っ張る行動である。
アメリカのリベラルよりの友人に言わせると、大局的に見ればブッシュ政権こそが911陰謀論の最大の受益者だという。
彼は皮肉げにこう言った。
友人
「アフガンとイラクの戦争を継続する上で、911陰謀論はブッシュ政権にとって大いに役に立っているよ。
アフガンでは未だにテロの主犯であるビン・ラディンを捕まえられず、イラクでは結局大量破壊兵器などなかったことが明らかになった。
アフガンでもイラクでも、占領統治に失敗していたずらに犠牲者を増やしているし、今も派兵終結の目処は立たない。
戦費はすでに膨大な額となって国家予算を圧迫しているし、サブプライム問題の対応などもあってこれ以上の無駄金は割けない。
にもかかわらず撤兵とならないのは、無論政府の面子もあるが、それ以上に反戦派が911陰謀論に拘泥し、分裂して有効な手を打てていないというのが大きい。
ほかにもっと有効な武器となるカードがあるのに、わざわざ911陰謀論という(ポーカーの手札で言うところの)ブタで勝負をかけてくるんだから、ブッシュ政権にとってこれほどありがたいことはないだろうよ。
最近では、911陰謀論の活動に資金を与えているのはブッシュの周辺なんじゃないかなんてブラックジョークもあるくらいだ。
この「陰謀論」の証拠に、イラクの状況が泥沼化しだした頃からブッシュの取り巻きが911陰謀論の根拠をほのめかすような発言をする例が増えているだろう?(笑)」
これはかなり皮肉な見解だが、実際問題として、911陰謀論は反戦活動の足を引っ張るだけでなんら有効な貢献を成しえない。
Love&Peaceな人達はそこのところもう少し考えてみるべきだろうね。
◆おまけ
911陰謀論がどれだけどうしようもない代物かをネタにする記事があるので、取り上げておこう。
AztecCabal - マット・タイッビ「9/11陰謀論の望みゼロのバカさ加減」
作者:黒影
更新日:2008年10月8日 3時12分
HIV/AIDSの出現時期が1880~1920頃まで遡りそうだという話
今日NationalGeographicの記事を見ていて知ったんだが、
最近の研究成果から、"HIV-1"と呼ばれている、最初に発見されたヒト免疫不全ウイルス(HIV)の出現が、もっとも古い場合だと1880年代までさかのぼりそうな事が分かったらしい。
HIV/AIDS Emerged as Early as 1880s
The AIDS pandemic in humans originated at least three decades earlier than previously thought, and it may have been triggered by rapid urbanization in west-central Africa during the early 20th century, according to an international team of researchers.
国際的な研究チームによると、ヒトの間でのエイズの流行の起源が、これまでに考えられていたよりも少なくとも30年はさかのぼることが明らかとなった。そして、20世紀初頭のアフリカ中西部の急速な都市化がその引き金となったようだ。
HIVの元となったのは、野生のチンパンジーが保有しているSIVcpzという2年前に発見されたウイルスだと考えられている。
BBC NEWS | Health | HIV origin 'found in wild chimps'
これがいつどうやってヒトへの感染性を獲得したかはまだ明らかではないが、これまでHIVの起源は1930年ごろのカメルーンであると考えられていた。
HIV流行の最初の記録は、1960年ごろの中部アフリカ、コンゴ人民共和国のキンシャサである。
この頃既に欧米でAIDS様の症状を発症した人間が確認されていることや、AIDSの長い潜伏期間を考えると、1940~50年ごろには既にある程度感染が広がっていたと考えられる。
後は皆さんご存知のとおり、HIVの存在が明らかになった1983年頃には既に制圧が不可能なほど感染が広がっており、以後世界中で猛威をふるうことになった。
今回研究者らは、60年代の患者の組織標本からHIVの遺伝子を取り出し、ウイルス株の系統樹を作成した。
HIVはレトロウイルスの一種であり、非常に進化速度が速いことが知られている。
そのため世界各地で流行しているHIVは地域によって株が違い、それぞれ微妙に性質が異なる。
余談だが、これは現在HIV感染の治療薬がなかなか成功しない理由の一つでもある。
また、各年代のサンプルの比較結果から、HIVウイルスの進化速度というのは既に判明しており、後は60年代のいくつかのサンプルから採取された遺伝子のばらつき具合から逆算することで、HIVが出現した時期、すなわち遺伝子の変異が一つの祖先株に収束する時期を計算する事が可能となる。
Worobey博士らは分子進化の数式モデルを用いて、1960年頃のHIVの遺伝子のばらつきが生じるには、少なくとも40年間の進化が必要であるという結論に達した。
60年代以降のパンデミックがはじまるまで、アフリカの一部の地域でひっそりと、数十年間かけてゆっくりと広がって行ったのだろう。
この研究は今週のNatureに発表されており、大して内容はないが日本語の要約も出ている。
Highlights : Nature 医学:HIVおよびエイズの昔と今 (要ログイン)
多分そのうち国内でもどこかがフォローするだろうから、それを待ってもいいかも。
◆関連記事
幻影随想: ホット・ゾーン ― 恐怖!致死性ウイルスを追え!
作者:黒影
更新日:2008年10月2日 22時20分
ニコニコ大百科の「ゲーム脳」の項が秀逸すぎる件
はてブのFavリスト経由で見つけたネタを紹介してみる。
「ゲーム脳」を小気味良く斬る逸品だ。
ゲーム脳とは (ゲームノウとは) - ニコニコ大百科
ゲーム脳とは、森昭雄さんとかいう日本大学の教授とおぼしき人が2002年に書いた著書、「ゲーム脳の恐怖」上で勝手に定義された、とんでもない造語である。
その正体は、論文すらいまだに存在せず、学会からは総スカン、科学的な根拠がないどころか矛盾だらけの疑似科学(ニセ科学)であり、今やすっかり都市伝説的なトンデモネタとして扱われている。しかし、新聞やテレビがこの造語がさも本当の脳神経学であるかのようにこぞって取り上げてしまったために、本書は10万部以上も売れてしまい、「ゲーム脳」は日本においてとても有名な造語になってしまった。
本書には、「自分の主観」と「自分で作った簡易脳波計」の2つをソースに「ゲームやってる奴は脳が痴呆症(=認知症)っぽい」という怪しい定義が書かれている。
なお、本書の著者である森さんは運動学が専門の文学部教授で、脳神経学に関してはまったくの門外漢なのだが、医学博士(筋肉の論文で取った)の肩書きを武器に、各マスゴミの協力を得てさも脳神経学の専門家であるかのように装っているため、注意が必要である。
例によって、事細かに知りたければWikipediaのゲーム脳の項目を見ることを推奨する。さらなるゲーム脳研究の醜態を知りたいなら、著者の項目も見逃すな。
ニコニコ大辞典はこれまで完全にノーマークだったんだが、こんな素晴らしいネタ記事があったなんて。
これだけでも中々ウィットの効いた良記事なんだが、ここからがすごい。
思いつきだけで根拠レスな主張を垂れ流す森を皮肉るかのように、きっちり資料を資料を引きながら膨大なツッコミが展開されている。
私が特に受けたのはこれ。
ただし、全てのゲームが悪いのではなく、森さんによると「太鼓の達人」や「DDR(Dance Dance Revolution)」は手足を動かしてリズムに乗るため、運動などと同じいい影響があるらしい。だからなのか、森さんは突然「太鼓やDDRは2002年に私がゲーム会社に提案したから開発された」と自分起源説を言い出す始末である(音声付きソース)。しかし、太鼓は2000年発売、DDRは1998年発売なのでどう見ても大嘘です、ありがとうございました。
いいよなあ、これ。
以前「サギとマルチと疑似科学」で疑似科学とマルチの共通点を取り上げたが、この記事を読んでもらえた人なら、森昭雄が三種類の人間のどれに該当するかはすぐに分かるよな?
教祖に求められるのは、たとえこんな風にすぐばれる大嘘だろうが、自分の嘘を自分で信じ込める性質だ。
他にも、やる夫ならぬあき夫の、
「あき夫が脳科学者になるようです」というネタがあってだな、これがまた面白い。
____ == 2000年 ==
/ \
/ ─ ─ \ 脳波を測っただけで「痴呆症患者の痴呆の進行度合いがわかる」
/ (●) (●) \ っていう理論を新しく考えたお
| (__人__) | これが実用化されればあき夫も脳科学者の仲間入りなんだお
\ ` ⌒´ / さっそくそんな夢の脳波計を作ってみるんだお
森あき夫 (大学教授・当時55歳)
この「ゲーム脳」の頁はほとんど一人の手によるものなんだが、一体どれだけ力を入れて編集してるんだw
以前アンサイクロペディアの「森昭雄」の頁を見たときも笑ったものだが、こっちのほうがさらに輪をかけて出来がいい。
久々に疑似科学ネタで気持ちよく爆笑した。
しかし世の中の情報弱者には、まだまだ森昭雄をまともに信じる人間が結構いるんだよな。
最後のほうの、この下りには完全に同意。
ぶっちゃけ、この言葉はなんにも人々の役に立っていない。言葉の存在自体が害でしかないのである。
世の中の情報弱者を無駄な恐怖に陥れ、不幸にもそんな人を親や担任として持っている子供を涙目にさせ、マスゴミによる事件・事故の報道の方向性とか矛先とかを思いっきり狂わせたあげく、ファミコン世代に代表されるゲーム好きやゲーム開発者を憂鬱にさせているだけなのである。
作者:黒影
更新日:2008年10月2日 21時18分
「未来を透視する男」―予言者ジュセリーノの使うトリック―
もう結構昔の話になるが、学部時代、私は教職課程を取っていた。
最近のカリキュラムでは、教員免許を取るためには介護実習を行うことが必須となっており、高校なら2日間、中学の教員免許をとるためにはさらに5日間の介護実習が必要となる。
そのため、確か大学3年の春休みの頃だったと思うが、私は介護実習のためにある老人ホームで一週間程働いていた。
そこでの仕事は、デイケアの老人の送迎や食事の用意、入浴介助などで、実習そのものはつつがなく終えたのだが、最終日にお別れ会を兼ねたレクリエーションということで、実習生が各自何か出し物をすることになった。
実習仲間の中には、歌を歌う者がいたりピアノを弾く者がいたり様々だったのだが、私はそこでマジックを行うことにした。
そのマジックが表題の「未来を透視する男」である。
多分初めて書くと思うが、私はマジックがかなり好きだ。
中でも心理誘導や心の盲点を利用したトリックや、種を明かせば「なあんだそんなことか」と言われるような誰でも出来る単純なものでありながら、そのくせ効果が抜群なトリックが特に好みで、自分でも少しかじっている。
「未来を透視する男」はそんなトリックを使った私の持ちネタの一つとなる。
◆未来を透視する男
このマジックはカードの透視にひとひねり加えた、一応は私のオリジナルマジックになる。
マジックの展開はこんな風に進む。
老人ホームの面々を前にした私は、その中から一人の協力者を募集する。
協力者は誰でもいい。やってもらうことは、単に紙に1~5までの好きな数字を書いてもらうことだけだからだ。
協力者が何を書くか見えないように、数字を書いている間、私は目隠しをして後ろ向きになる。
協力者が数字を書いたら、私は目隠しをしたままで、会場の他の人達に何を書いたのか見て覚えてもらう。
勿論ここでずるをして何を書いているかのぞき見たり、あるいは予め協力者と示し合わせたりするようなチャチなトリックは使わない。
会場が数字を確認したら、紙を隠してもらい、私は目隠しをとる。
ここで何の数字を書いたかをずばり言い当てるのが普通の透視のマジックだが、私の場合ここでひとひねり入れる。
マジックを始める以前に、協力者が何の数字を選ぶのかをあらかじめ予言したメモを書いておき、こう告げる。
「ここであなたが何の数字を書いたかを当てるのが普通のマジックですが、それではありきたりすぎてつまらないので、今回は少し趣向を凝らしてみました。
実は私には予知能力があり、あなたが何の数字を書くかは、このマジックを開始する前からあらかじめ分かっていたのです。
その証拠に、あなたの書いた数字をあらかじめ予言した封書をあなたにお渡ししましょう。」
と告げながら、おもむろにポケットから封筒を取り出し、相手に渡す。
相手は封筒の封を切り、中から自分の書いた数字と一致するメモを取り出してびっくりする。
会場も結果を知り一気にどよめきに包まれる。
実行条件にいくつか縛りがあるのであまり多用は出来ないが、まだ一度も外したことがない私の十八番だ。
◆インチキ予言のトリック
さて、ここからが本題。
何でこんなマジックの話を始めたかというと、このマジックに使われているトリックとよく似たトリックを使うイカサマ預言者が最近幅をきかせ始めているからだ。
はっきり名前を出すならジュセリーノのことなんだけどな。
Googleで「ジュセリーノ 予言」を検索するとわんさかビリーバーのサイトが釣れるが、よくもまあこの程度の口上に引っ掛かるものだ。
彼の使っているトリックは非常に単純なもので、予言どころか予測というのもおこがましいレベルの代物なんだが。
彼の使っているトリックを説明するには、私のマジックの解説からはじめるのが良いだろう。
私のマジックで使っているトリックと、ジュセリーノの使うトリックはほとんど同じものだからだ。
当たり前の話だが、マジックである以上、私は本当に予知や予言を行っているわけではない。
それどころか、目隠しを取った段階では、私はまだ相手が何を書いたかすら知らない。
私は目隠しを取った後に、ある方法で書かれた数字を知るわけだが、そこは本論ではないので省略する。
問題は、知るはずのない未来を予知する方法である。そしてこれがジュセリーノの使うトリックにも繋がる。
ここまで書けば恐らく気が付く人もいるだろうが、タネを明かそう。私のポケットの中には、協力者が書くであろう数字のメモが入った封書があらかじめ全てのパターン用意されているのだ。
そして書かれた数字を知った後に、おもむろにその数字に対応する封書を取り出し、あなたが書いた数字はあらかじめ予知されていたと告げるのである。
後は演技力次第で、例えあらかじめマジックだと断りを入れていても、ネタを知らない観客は「ありえないことが起こった」と、どよめくのである。
ジュセリーノのトリックの場合、事はもっと単純だ。
彼は常日頃から世界中に、「起こりうるかも知れない事態」を延々書き連ねた手紙を送り続けている。
彼の「予言」の正確な数は知らないが、確か年間で数千は下らなかったはずだ。
そして自分が書いた「予言」に近い何らかの事件が起こった後に、したり顔で「私はそれを予言していた」と告げるのだ。
私のマジックでポケットの中に用意されていた全ての数字の封筒が、彼が日々送り続けている「予言の手紙」に相当する。
例えば4人の人間が立候補した選挙の結果を「予言」する手紙を、4通それぞれ別の候補者の名前を書いて出せば、100%選挙の結果を「予言」することが出来る。
地震や台風などの天災は「予言」がそれなりに難しいが、様々なパターンを網羅した手紙を何千通も作成すれば、それなりにいい結果は出る。
このときに、当たらなかった残りの数千はどうでもいい。
私がマジックで外れの4通のことを表に出さないように、むしろ出してはタネが割れるので困るのだ。
逆にマジシャンとして彼を見た場合、彼のやっていることはかなり優秀だ。
恐らく優秀なスタッフを大勢抱えているのだろう。
毎年何千もの「予言」を行い、その結果をチェックし、当たりが出たらマスコミに向かって大々的に宣伝し、何千何万もの信者に対し自分が本物の予言者だと信じ込ませる。
下に挙げている例のように海外に向けた布教にも余念がない。
これは生半可なことで出来ることじゃない。
以前「サギとマルチと疑似科学」で取り上げたスマートで計算上手なサギ師の類例だな。
ジュセリーノ・ダ・ルース - Wikipedia
Wikipediaのジュセリーノの項目には、あらかじめ予言が確認されている事象の当否がリスト化されている。
これを見れば彼の予言の大部分は外れ、当たりになりそうなものも、微妙にかすっている程度のものがほとんどであることが分かるはずだ。
◆テレビ東京がまたやってくれる件について
ところで、テレビ東京が10月9日にまた馬鹿番組を放送するらしい。
先日もウォーターエネルギーシステムに引っ掛かっていたと思ったがまたか。
テレ東系「史上最強の予言者-」会見を開催(サンケイスポーツ) - goo ニュース
10月9日放送のテレビ東京系「史上最強の予言者 ジュセリーノ」(後7・0)の会見を26日、都内で開いた。ブラジル人の予言者、ジュセリーノ・ノーブレガ・ダ・ルース氏を特集する第2弾。昨年2月の前回放送で「9月13日にアジアで大地震が起こる」と予言したが外れ、「いつも逆のことを祈っている。地震が起きなくてうれしかった」などと弁明。今回は「水不足による戦争のぼっ発」などを予言するという。
よりにもよってインチキ預言者ジュセリーノを取り上げようという辺り、ディレクターはよほど不勉強なのか、それとも馬鹿を騙して視聴率を稼げればそれでいいと考えている手合いなのかどちらかだろうな。
これでまた、岡崎でパニックを起こしたような手合いが増えるかと思うと、正直げんなりする。
<予言>「岡崎で大地震」うわさで町は大揺れ(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
多分放送以後ビリーバーがはしゃぎ回ることが予想されるので、
十八番のネタを明かすというタブーを犯してでも、あらかじめ予防薬を用意しておくことにした。
◆おまけ
「未来を予言する最良の方法は、自らがその未来を作り出すことである」Byアラン・ケイ
他人の予言に右往左往するよりは、自分の手で未来を切り開いていくほうが私の好みだな。
えせ予言者が幅をきかせる未来なんてまっぴらごめんな私は、とりあえずこうして行動することにする。
◆もひとつおまけ
ちょっと関連の薄いネタだが、
ケイシー、ユンゲラーの進化形にフーディンを持ってきたポケモンの開発陣は、実にネタというものをよくわかってる連中だと思う。
意味のわからない人はそれぞれのポケモンの元ネタを見てみよう。
ケイシー →エドガー・ケイシー - Wikipedia
ユンゲラー →ユリ・ゲラー - Wikipedia
フーディン →ハリー・フーディーニ - Wikipedia
作者:黒影
更新日:2008年10月1日 1時22分
例の食育マンガのネタについてまとめてみた
ここしばらくニセ科学関連のトピックスがはてブでずいぶんとにぎわっていたので、いくつか注目度の高かったものをまとめて紹介してみる。
主に食と健康のニセ科学だな。
ちょwwww食育冊子wwwww - 荻上式BLOG
先日友人達と旅行中、「手作り雑貨とかも売ってるエコなカフェでっせ」的な店に入ったわけですが、そこにあった冊子がマジパネェ。ガチパネェ。
やはり最初はこれだろう。
マクロビ系統の、明後日の方向に旅立った食育マンガをネタ的に取り上げるエントリ。
マンガのわかりやすさといい、AAが作られそうなくらい典型的なトンデモ主張といい、実にインパクトのある一品である。
「これって陰謀だわ」
「よくわかんないけど陰謀だ!」
「大陰謀だ!」
の流れには思わず吹いた。
未読の方は是非リンク先へ。
ちなみにネタにされているマンガの出版元は「美健ガイド社」というところだが、ここは新風の関連団体なんだな。
ちょwwww新風wwwww - dj19の日記
荻上チキさんのブログで話題になってるアヤシイ会社「株式会社美健ガイド社」に関してブクマコメで知ったんですが、ここ新風の関連団体(こちら参照)なんですね(笑)
新風たすけあひ機構 - Wikipedia新風たすけあひ機構(しんぷうたすけあいきこう)は日本のNPO法人。右派・保守系の政治団体維新政党・新風の関連組織である。北海道、東京都、神奈川県に事務所を構える。協賛企業には、維新政党・新風代表の魚谷哲央が経営する株式会社洛風興産、同広報委員長松村久義が経営する有限会社東京トラックスのほか、有限会社美健ガイド社がある。主な活動内容は、食育・健康法の啓蒙活動、地域の防犯パトロール、介護方法の指導講座の開催、バリアフリーの啓蒙活動としている。
さすが911にはまり支持者にナノゼリーを勧める瀬戸弘幸の所属政党だけはある。
こんなところでも顔を出すとは、伊達にお笑い政党をやってないな。
こっちのページにマンガのサンプルがあるので、興味のある人は読んでみるといい。
色々な意味で味わいがたい体験が出来るぞ。
美健ガイド社 - 三代先の子どもたちのために
お勧めは経皮毒系の子ども法廷シリーズや、チキさんのところでも取り上げているカン・ジン・カナメの健康教室シリーズ。
この二つはトンデモ度がマジパネェ。
これくらいトンデモだと騙される人もそうはいるまいと思うのは、素人の浅はかさ。
どんな疑似科学にも構わず食いつくダボハゼのようなビリーバーというのは結構存在するのだ。
例えば911陰謀論から水からの伝言、アセンションまで何でもござれのきくちゆみのように。
きくちゆみのブログとポッドキャスト: 『白砂糖は魔薬!?』をこどもと一緒に読もう!
小児科医として信頼している真弓定夫先生が、こどもとお母さん向けにマンガで『白砂糖は魔薬!?』を出してくれました。前にも「こどもと読みたい健康(いのち)の本、4冊入荷しました」というタイトルでとりあげたけれど、もう一度このことについて書きます。
この人はもう完全に川の向こうの住人だな。
なお、新風や美健ガイド社の主張とマクロビの相似性について言及しているブログがあったので、これも一緒に紹介しておく。
ギョーカイでは当たり前のこと。マクロビ信者以外は配慮してくれないと - 土曜の夜、牛と吼える。青瓢箪。
ところがですね、マクロビ経験者としては食育冊子に書いてあることってマクロビオティック界隈(正食業界)ではよく見かける話だったりするんですな。よく見ると漫画本の紹介に「身土不二」なんて言葉があっったりしたので個人的にはあーなるほどと思った次第です。「食育」というよりも「食養」のほうがギョーカイ用語的です。
この件に対する食品安全情報blogのuneyamaさんのコメント
2008-09-27 - 食品安全情報blog:雑記-「食育」
成長が止まった成人が、個人の責任で偏った食生活を選択するのは勝手にすればいいと思いますが、胎児や乳幼児の発育に悪影響が出るような食生活を薦めるのはほとんど犯罪でしょう。
残念ながらこの手の人たちは育児や教育現場には一定数いて、普通の人より声が大きくて目立つので、それなりの影響力があるのです。
小学校のPTAでも、こどもの喫煙対策にはあまり賛同が得られないのに(親や教師自身が喫煙者だったりするので)食育やゲーム脳の話はすぐに取り上げられる、という経験があります。
保育園や学童界隈だともっと強烈でした。
はてなーの皆さんには、配偶者や付き合ってる人がエコやロハスが好きだったりするとあっちの世界まであと一歩ですので、是非こどもだけは守ってください、とお願いしておきます。
この件に対する私の意見もuneyamaさんのものとかなり近いかな。
特に問題なのが、幼稚園や小中学校に、この手のニセ科学にはまっている先生や保護者が結構いること。
そしてこの手のニセ科学にはまる人間は大抵「問題意識だけは」強いので、本人は善意のつもりでこういうのを勧めて来るんだよ。
人間関係に波風を立てずにそれを断るのは結構難しい上、断ったら断ったで子供のことを考えていないとか言い出すしな。
栄養学で理論武装してこういう手合いを叩きのめすのはさして難しくもないのだが、なんかいい対処法は無いものかね?
P.S.
マンガのサンプルのページに、知っている漫画家の絵をいくつか見つけて悲しくなった。
こういうプロパガンダマンガを描くのも売れなくなった漫画家の末路か…
作者:黒影
更新日:2008年9月27日 21時54分
勘というのは、経験と理論に裏付けられた立派な才能である
地下に眠るMさんが面白げなネタを振っていたので反応してみる。
100%のガン探知とプレコックス感とにおいの科学 - 地下生活者の手遊び
化学的メッセージには多くの種類がある。あるものは時間をこえて作用し、先に行った個体に何かがおこったことをあとからくる個体に警告する。
中略
私はひじょうに多くの成功例をもつすぐれた臨床家である精神分析医と嗅覚的メッセージについて論じたとき、この臨床医が六フィートあるいはそれ以上遠くから患者の怒りのにおいを明瞭に識別できることを知った。精神分裂症患者を扱っている人は、この病気の患者が特有のにおいをもっていると昔からいっている。このような博物学的観察は一連の実験を生んだのであるが、その中でも、セント・ルイスの精神科医であるキャスリーン・スミス博士は、ネズミが容易に分裂症患者と非分裂症患者のにおいをかぎわけることを示した。化学的メッセージ・システムの強力な効果を考えてみれば、怖れとか、怒りとか、分裂症的な恐怖とかが、近くにいる人の内分泌系に直接に作用するのではないかともみられよう。案外そのようなことが実際におこっているかもしれない。
P73 第4章 空間の知覚-----遠距離受容器 目、耳、鼻 より
精神分裂症(統合失調症)における「特有のにおい」などといわれると、プレコックス感が連想されますにゃ。私が研修医時代に教わった精神医学用語のうち、いちばん釈然としなかったのがこの言葉である。
「プレコックス感」とは、1941年ごろにオランダのリュムケという精神科医が言い出した言葉であり、簡単に言えば分裂病の患者と面と向かったときに感じるなんとなくいやーな感じのこと。なぜそんなものに「プレコックス感」などという大仰な名前がついているのか、私にはさっぱりわからなかった。しかも、それが分裂病の診断に有用だときいて私はのけぞった。
「なんとなくいやーな感じ」で分裂病を診断していいんかい、おい。
二種類の精神医学事典で「プレコックス感」を引いてみたが、載っている説明はおそろしく歯切れが悪い。「分裂病者に相対したとき観察者のうちに起こる一種言いようのない特有な感情」(弘文堂)、「〈その感じ〉は言葉ではなんとも表現しがたく、表情のかたさ、冷たさ、態度のぎごちなさ、感情疎通性のなさ、奇妙な唐突さなどとともに〈分裂病らしさ〉として分裂病者の人格全般から直観的に把握される総合的な感じ」(講談社)だそうだが、両方とも「一種言いようのない」「言葉ではなんとも表現しがたく」とはなから定義をあきらめているし、〈分裂病らしさ〉なんてのはトートロジーもいいところ。そういや「プレコックス感」という言葉自体、もともとは「分裂病的な感じ」という意味だったっけ。
なんでも言語化不可能な微妙な「感じ」らしいのだが、そんなもので診断されてはたまらないと思うのは私だけではあるまい。
http://homepage3.nifty.com/kazano/precox.html
ここに続く引用で、「サイコドクターあばれ旅」氏は「私は今まで百人を超える分裂病患者を診てきたが、「プレコックス感」がどんな感情なのか、いまだによくわからない。」と言っていますにゃ。でももしかして、このプレコックス感って患者の臭いなんじゃにゃーのか?
地下に眠るMさんは、以下がん検知犬の話につなげつつ、もしかしたらこの精神科医も「臭い」で患者を判別していたのではと続けるのだが、私はこの意見にはかなり懐疑的。
ガスクロによる呼気のがん検診というのがあるくらいなので、ガン検診犬というのは十分ありうるけれど、HPの記述を見る限りではクレバーハンス効果がどれだけ考慮されているのか不安に感じるし、このプレコックス感についても、もっと適切な説明があるのではと思う。
クレバーハンス効果についてはこの辺を参照のこと
・オリバー・ウッドのイギリス動物日記 : 賢いハンスの話
・超常現象の謎解き:クレバー・ハンス
余談だが、賢いハンスのように相手の微細な「サイン」を読み取る能力に長けている職業が占い師であり、この「サイン」を能動的に引き出し利用する技法はコールド・リーディングと呼ばれている。
これは個人差によるところが非常に大きいのだが、賢いハンスに限らず、人間でも占い師のように「サイン」を読み取ることに長けた人というのは存在する。
そして、その「サイン」を読み取る対象というのは別段人に限らず、動物だったり自然だったり、あるいは文章だったりする。
その能力は、通常こう呼ばれることが多い。
すなわち「勘」である。
引用元の記事にコメントした内容とかぶるのだが、私の知り合いの医師に言わせると、「勘」というのは非言語的な瞬間的な判断の産物なのだそうだ。
彼は「複数の条件判定文が頭の中で一斉に作動して、ひらめきという形で表れる」という表現を使っていたが、医者は訓練と経験をある程度積むと、患者やレントゲン画像、CT画像なんかを前にしたときに、一瞬でそこに「サイン」を読み取り症状の判断が付くようになって来るそうだ。
そしてそれが「非言語的な一瞬の判断」なので、ひらめきの理由を一つ一つ言語化するのは中々難しいとも言っていた。
微細な「サイン」を読み取り「勘」を意識的に働かすにはある程度の訓練がいるのだろうが、この能力は誰しも少なからず持っているものである。
「ピンと来た」とか「~臭がする」という表現を使ったことがある人間は多いはずだ。
勘というのは、経験と理論に裏付けられた立派な才能である。
話をプレコックス感に戻すと、恐らく引用元に出て来る臨床医やリュムケの持っていた判別能力も「勘」と同類のものである。
経験と知識から脳が「統合失調症患者にありがちなサイン」を患者から一瞬で読み取り、それを臭いとか「プレコックス感」という言葉で表していたのだと思われる。
臭いで患者を判別できる超人が存在する可能性を否定はしないが、恐らく彼らはハンスのように、必要な視覚情報や聴覚情報を遮断された状態では、患者の判別が出来なくなったはずだ。
犬や馬も持っているように、基本的に「勘」というのは本能的なレベルで存在するものなので、これを言語化するのはなかなか難しい。
ゆえに昔の精神科医はこれを「臭い」とか「プレコックス感」と表現したのだと思われる。
ちなみに、この「勘」という能力は、それが正当な「サイン」に対して発揮される場合は非常に有効なのだが、誤った「サイン」に対して発揮されてしまうと、なまじそれが言語化できていない本能的なレベルのものだけに問題がこじれる原因となる。
上記引用先でサイコドクターあばれ旅氏が反発を感じているのも恐らくそういう部分ではないだろうか。
専門家は正当な「サイン」を読み取ることが出来るように訓練されてはいるが、必要なときにはその成否を検証可能なように、「勘」の中身を言語化する能力もまた必要なのだろう。
なおこの「勘」という能力は、先日のエントリ「人はなぜ信じるのか―迷信と疑似科学―」で取り上げた、「原因と結果の間に結びつきを見出す能力」と同根のものである。
作者:黒影
更新日:2008年9月24日 3時22分
疑似科学 混ぜるな危険!
深層心理学(フロイト・ユング)、トランスパーソナル学、シュタイナー教育
船井幸雄、森田健、村上和雄、江原啓之
マクロビオティック、お産、ホメオパシー、さまざまな医療、レイキ
超心理学、精神世界・新霊性運動・超自然・超科学
さて、上に列挙したものを見て何だと思うだろうか?
疑似科学のリスト?
確かにそうだが、どこにあったリストだと思う?
答えは、とある大学教授が自分のホームページに「もっと勉強したい」とタイトルを付けて列挙した、読破済みの本のジャンル一覧である。
もっと勉強したい
この時点で「なんじゃそりゃー!」と呆れかえる人の姿が目に浮かぶようだが、まだまだこの程度で驚いてもらっては困る。
次にはもっと破壊力のあるページを見てもらわなければならないのだから。
笑撃のページはこちら。
メニュー(A)学問の基礎について知りたい
というこのページ、サブタイトルが「学問・科学・超科学・本・大学など」となっていてワクワクしながらページを開いたのだが、予想通りとはいえ、そこにあった物のあまりのインパクトに、本気でしばらく笑い転げた。
「学問の基礎」というタイトルで、江本勝、喰代栄一、飛鳥昭雄、中丸薫というそうそうたる面子がいきなり目に飛び込んで来るんだぞ?おまけにまともな学者の名前は一つも上がって無いし。
それぞれの本の紹介文も突っ込みどころ満載というか、もう疑似科学ウォッチャーを笑死させるための罠なんじゃないかって具合で、もう腹の皮がよじれそうだ。
最近渋研さんとこあたりで、『go.jp』ドメインや『ac.jp』ドメイン、『ed.jp』ドメイン内の疑似科学ネタを探すのが流行っているようなので、私も試しに『site:ac.jp ホメオパシー -ニセ科学』でやってみたら、一件目にヒットしたのがこのサイトだった。
あまりの笑撃度にこれ一つでおなか一杯というか、このレベルのが他にいくつも出てきたら腹筋が持たない。
この大学教授、専門は宗教学や哲学なのだそうだが、哲学系や宗教学系の先生で疑似科学に免疫がないどころか諸手を挙げて歓迎してしまうような人というのは、実は結構いたりする。
・PSJ渋谷研究所X: 国土交通省にも神戸市にも「水伝」汚染?
作者:黒影
更新日:2008年9月23日 1時10分
自治体って水伝みたいなネタに対する耐性が弱かったりする
はてブの疑似科学ネタを定期巡回していたら、こんなものを見つけてしまった。
『おみず』のはなし:神戸市保健福祉局局 環境保健研究所環境化学部
最近、この私達にとって非常に大切な水に、情報を記憶したり伝えたりしている可能性があるということが明らかになってきました。水を汲んだボトルに『ありがとう』や『愛』、『感謝』といった文字を書いた紙を貼り、凍らせた水の結晶は、とても美しく神秘的な形をしているのに、逆に、ネガティブな言葉『ばかやろう』や『殺す』などの文字を貼ったボトルの水の結晶は、とてもいびつな形をしていたそうです。水に音楽を聞かせても同じような結果が得られるそうです。興味のある方は、江本勝氏の著した『水からの伝言』を読んでください。
神戸市はじまったな。
誰か知らんがコンテンツの製作者が水伝ビリーバーのようだ。
水伝の最大の問題点は、行政レベルですらこうやって本気で信じ込む人間が存在するほど、広く一般に浸透してしまっている点にある。
しかしこのコンテンツ、今まで誰からもチェック入らなかったんだろうか?
それはそれで終わってるが。
k-takahashiさんがこのコンテンツにこんな風にコメントしていたが、私も同感だ。
2008-09-19 - k-takahashi’s 雑記
私が神戸市民だったら、罷免請求してるかもしれん。
神戸市の浄水場の沈殿槽や濾過槽に、耳なし芳一よろしく、びっしりと「ありがとう」とか「愛」とか書いてあったり、水質改善のためと称してモーツァルトでも流れていたらさぞ愉快だろうが、きちんとした機関に依頼して水質基準をチェックしなおした方がいいのではないかと思う。(労働環境改善の一環として、「ありがとう、を励行しよう」という張り紙を貼ったり、モーツァルトをBGMに流したりするのは別に構わない。が、水伝を信じるということは、まともに実験とかできないということを意味する。水質検査がきちんとできているかどうか、本気で不安だ。)
「やれやれ ゆかいだね」と言っておこうか。
<9/23追記>
本件に関して、みみずくからの伝言のとらこさんが神戸市当局に問い合わせをされ、市は問題の記述を削除したようです。
とらこさんGJ。
みみずくからの伝言 - とりあえず神戸市にメール送った(追記あり)
みみずくからの伝言 - 神戸市から返事がきました
◆おまけ
おまけとして、本気で愉快なネタを。
・「水からの伝言 官能版」登場!
ネタです。何かを飲みながらこれを読むことはお勧めしません。
口一杯に水を含んだ状態でこれを読んで、最後まで噴き出さずにいられたらあなたは勇者です。
なお、上記の行為に挑戦して万一キーボードやモニタを壊したとしても、当方は責任を持ちませんのであしからず。
作者:黒影
更新日:2008年9月20日 1時38分
All Your base are belong to us!
―お前たちのゲノム(塩基)情報はすべて我々のものだ!―
とGoogleが考えているかどうかは知りませんが、Googleが出資しているベンチャーの一つに、23andMeというゲノム解析ベンチャーが存在します。
23andMe - Beyond genetic testing: Personal DNA analysis and research for health, family, ancestry, and genealogy.
23andMe - Wikipedia
この会社は1000ドルで個人のゲノム解析を請け負い、どんな遺伝子を持っているのか―例えば目、肌、髪の色や、身長体重に影響する遺伝子の有無、身体能力や特定の病気のかかりやすさ、家系などを調べてくれます。
解析結果はオンラインでブラウザを用いて見ることが出来、ユーザーがそれを望めば自分の遺伝情報を他の人に対して公開することも可能です。
TechCrunchに体験レポが載っていたのでちょっとリンクを置いておきましょう。
TechCrunch Japanese アーカイブ » 23andme、DNA解析サービスを開始―邪悪か? 未来の生活か?
TechCrunch Japanese アーカイブ » 私の23andMe DNA検査結果
この遺伝子解析サービスは現在ではまだ半分お遊びのようなものですが、今後ゲノム薬理学(PGx:Pharmacogenomics)の研究が進んで、遺伝子と様々な病気のかかりやすさや治療に対する反応との関連が分かってくれば、先端医療を受ける際に個人のゲノム解析は必須の検査項目となってきます。
このブログでも何度か取り上げていますが、最近のゲノム解析技術の進歩はすさまじく、あと5年もすれば1000ドルで個人のゲノムを完全解読可能な時代が来ると予想されています。そうなれば、遺伝情報に基づく様々な産業が発達するはずです。
・幻影随想: ゲノム解析のコストが6万ドルまで下がった
・幻影随想: 1時間で1000億塩基解読可能な次世代シーケンサー
・幻影随想: 次世代高速シーケンサーの解析コストとか日本の出遅れ具合とか
この解析速度向上と価格破壊の速度はすさまじく、数年前の機械を使っていると、もう最新の機器のコストパフォーマンスには数桁劣るくらいです。
そのようなすさまじい競争の中で生き残るには、潤沢な資金にものを言わせて最新技術に喰らい付いていくしかないわけで、23andMeも最近大幅な解析料金の値下げに踏み切っています。
23andMe slashes price on personal genetics test - Yahoo! News
The decision by 23andMe Inc. to cut the price of its test from $999 to $399 could herald a price war in the small but buzz-heavy marketplace for direct-to-consumer genetic testing. The company's main competitors charge anywhere from just under $1,000 to $2,500 for similar services.
遺伝子解析ビジネスというのはまだマーケットが小さく、しかも解析に必要な機材、人材には多額の投資が必要です。23andMeは資金面ではかなり強いので、ライバル企業がまだ1000~2500ドルの費用を必要としているのに対し、400ドルと一気にリードを広げて市場の寡占化を狙うつもりだと考えられます。
23andMeの狙いは、5年10年先を見越した医療産業向けのアウトソーシングビジネスです。
残念ながら現在の知見では解読したゲノム情報を十分に生かす事ができないのですが、恐らく10年後には、部分的ではあってもゲノム情報を拠り所とした治療が実際に行われだすはずです。そしてゲノム解析の設備を病院毎に用意するのは膨大なコストがかかり、またゲノムデータから有用な情報を引き出すためにも巨大なデータベースが必要となるため、これを病院毎に用意するのは賢くありません。受託産業の成立に必要な条件は整っています。
このビジネスモデルが成功すれば、文字通り"All Your base are belong to us"を地で行く企業が誕生します。しかし黒字が出るまでは膨大な赤字を垂れ流すことになるのが必至なビジネスモデルで、ベンチャーではない通常のバイオインフォ企業には容易に手を出せないビジネスモデルですが。
こういうビジネスは日本では資金が集まらず無理なので、ベンチャーが成立するアメリカがちょっとうらやましいです。
作者:黒影
更新日:2008年9月17日 22時44分
関東地区女性校長会が激しくやばい件
今日ニュースを巡回していて激しく吹いた記事。
『教育現場に水のメッセージを』(『Hado』9月号)|ほたるいかの書きつけ
今年3月初め「EMOTO PEACE PROJECT」の事務局であるOFFICE MASARU EMOTOに、1本の電話がありました。
電話の主は、埼玉県所沢市にある小学校の校長先生からで、その内容とは、
「7月に予定されている関東地区女性校長会の総会に『水からの伝言』の著者である江本勝氏の講演をお願いできないでしょうか」というものでした。(以下略)
関東地区女性校長会という、小中学校の女性校長の団体に江本勝が招かれて講演したんだそうな。
これだけでも何考えてんだかという感じなんだが、続く部分を見てさらに悶絶。
また、最近の実験から、韓国の大学病院産婦人科との共同研究として、妊婦さんの羊水に音楽や言葉を見せた結晶も紹介されました(46ページに関連記事)。(引用者注:同じ号に、羊水をホメオパシーにならって5万倍に薄めた水の結晶が紹介されている。下参照)
先生が用意した妊婦さんの羊水をホメオパシー溶液の倍率である5万倍に薄めた水の結晶を撮影しました。
羊水の結晶です(写真1)。この羊水に韓国語で「堕胎」という言葉を見せて撮影すると(写真2)、何か文字のようなものが現れました。
羊水に子どもの写真を見せたら、とってもいい結晶になりました(写真3)。
水伝にホメオパシーとか、あまりにイッちゃってて素敵すぎる。
こんなとんでもない講演をしたんならさぞかし会場は荒れただろうと思いきや、さにあらず。
講演は好評のうちに終わり、この講演会に参加した120人の女性校長のうちの何割が申し込んだのかは知らないが、後日水からの伝言の無料配布に7000冊もの応募があったそうな。
そして、最後に、現在展開しております「EMOTO PEACE PROJECT」の説明が行われ、子どもたちに絵本を配布したいという小学校には、無料でご提供させていただくと申しあげました。
すると、後日、各小学校より続々と注文があり、すでに約7000冊の絵本が関東圏内の子どもたちの手元に届けられました。
オープンな心で、愛情と熱意をもって教育にあたっておられる、たくさんの女性の校長先生方を前に、明るい希望が感じられた、そんな一日でした。
冊数から見るに全教室への配布とか、下手をすると全校生徒への配布とかやってそうだ。
私はこれを読んでも乾いた笑いしか出て来ないのだが、講演会場では明るい希望を感じるおめでたい人間が少なくなかったらしい。
関東地区女性校長会傘下の校長は、そろいもそろってカモがネギをしょっている性質の人間ばかりなのだろうか?
ここまで酷いともう笑うしかない。
これだけだとあれなんで、一応
「水からの伝言」を信じないでください
田崎先生の書いた、なぜ水伝がだめなのかのまとめ。

水はなんにも知らないよ
左巻先生の書いた、水伝批判をメインにした疑似科学入門書。
もし騙されている人がいたら上のサイトとともに勧めてあげましょう。
作者:黒影
更新日:2008年9月16日 23時23分
クジラの進化系統図に新たな一枚が追加された
クジラの先祖は構造生物学やゲノム比較の研究から、偶蹄類のシカやカバに近い動物であると考えられている。
(現存する動物のうちもっとも近縁なのはカバ)
化石やゲノムの研究からクジラ類と他の偶蹄類は約6000~6500万年前頃に分岐し、約5000万年前に海洋進出を始めたと見られている。
大まかな系統図と登場年代を図にするとこんな感じになる。
cf.原クジラ亜目 - Wikipedia
|鯨偶蹄目Cetartiodactyla
├クジラ目 約6,500万年前~
| ├パキケトゥス科 Pakicetidae (陸生クジラ類)約5,300万- 約5,000万年前
| └真鯨類
| ├アンブロケトゥス科 Ambulocetidae 約5,000万- 約4,900万年前
| └┬レミングトノケトゥス科 Remingtonocetidae 約4,900万- 約4,300万年前
| └プロトケトゥス科 Protocetidae
| ├ゲオルギアケトゥス(ジョージアケタス) Georgiacetus
| ├プロトケトゥス Protocetus
| └─バシロサウルス科 Basilosauridae 約4,100万- 約3,300万年前
| └─現鯨類 Autoceta 約3,000万年前~
| ├ハクジラ亜目 Odontoceti
| └ヒゲクジラ亜目 Mysticeti
└他の偶蹄目
例えば最近発見された化石の中では、4800万年前の地層から昨年発見されたIndohyusという半水棲の哺乳類などが昨年注目を集めた。
・Whales Evolved From Tiny Deerlike Mammals, Study Says
・BBC NEWS | Science/Nature | Whale 'missing link' discovered
・クジラ達の先祖が見つかった(生態学と進化) / 科学ニュースあらかると - Indonyus,クジラの先祖
化石骨格からの予想図では、Indohyusはおそらくこんな姿をしていたと思われる。

◆新たなミッシングリンクの発見
さて、クジラの進化を考える上でこれまでよく分からなかったのが、クジラ類がいつあの特徴的な三角形の尾びれを獲得し現在の形態に進化したかという問題だった。
上の図の姿を見て分かるとおり、Indohyusは現在のクジラとはかなりかけはなれた形態的特長を持っている。
同時代に存在したアンブロケトゥスやレミングトノケトゥスのグループも大体同じで、まだ半陸生の特徴を備えており、現在のクジラにつながると考えられている完全な海洋性のバシロサウルス科がいつ頃進化したかはまだ良く分かっていない。
三角の尾ひれを持つ最古の化石は、Indohyusの時代から約1000万年後、3800万年前のプロトケトゥス Protocetus (プロトケトゥス科)の化石であり、3500万年前頃には既に現在のクジラと同様の形態のヒレを持つバシロサウルスグループの化石が数多く発見されている。
そしてその間1000万年がどう埋まるのかというのが難問だったわけだ。
プロトケトゥス想像図
で、ようやく今回見つかったクジラの化石の話になる。
最近発見された化石によってそのミッシングリンクが少し埋まったかもというのが今回の話。
Whales Had Legs, Wiggled Hips, Study Says
Early Whales Had Legs | LiveScience
約4000万年前のこのクジラは、プロトケトゥスの近縁であるジョージアケタス(Georgiacetus)に分類されたが、ご覧のとおり三角形の尾びれを持ってはおらず、その代わりに水かきの付いた大きな足を持っている。
そして重要なことに、このクジラの後足の骨は水を掻くことが出来る構造を持っておらず、つまり足で水をかいて進むのではなく、現在のクジラと同様に体を上下にくねらせることで推進力を得ていたと考えられた。
一旦後足がただのフィンと化した後は、その機能がもっと効率の良い尾びれで置換される方向に進化するのは必然だったのだろう。
ジョージアケタスの200万年後には既に後足が完全に退化し、尾びれを獲得したプロトケトゥスやバシロサウルス科が出現し、さらに数百万年後の現鯨類出現につながっている。
論文はどうもWebに公開されてはいないようだが、タイトルだけは判明したので一応載せておく。
どうやらGeorgiacetusから新たな属、Pelagicetiという名前で分類しなおすようだ。
Uhlen, M: New protocetid whales from alabama and mississippi, and a new cetacean Clade, pelagiceti. In: Journal of Vertebrate Paleontology 28, S. 589–593, 2008.
学会からのプレスリリースは出ているようなので、これもついでに貼っておこう。
PRESS RELEASE - It’s All In The Hips! Early Fossil Whales Used Well Developed Back Legs For Swimming
作者:黒影
更新日:2008年9月13日 23時40分
人はなぜ信じるのか―迷信と疑似科学―
以前「疑似科学と空気の研究」シリーズでも書いたことだが、ヒトという生物は生得的に『超自然的な何か』を信じやすいように出来ている。
幻影随想: 疑似科学と「空気」の研究(その1)
幻影随想: 疑似科学と「空気」の研究(その2)
リチャード・ドーキンスはその著書『盲目の時計職人』のまえがきで「それはあたかも、ダーウィン主義を誤解し、信じがたいと思い込むように、人間の脳そのものが特別にデザインされているかのようですらある。」と書いているが、実際ヒトという動物は、多かれ少なかれ遺伝子レベルでこうした性質を生まれ持っているらしいことが、徐々に明らかになりつつある。
今日はそんな内容の記事を一つ。
Superstitions evolved to help us survive - being-human - 10 September 2008 - New Scientist
迷信は我々の生存を助けるために進化した
ダーウィンは道を横切る黒猫や、梯子の下をくぐることや舗装のひび割れを踏むことに注意したりはしなかったが、彼の自然淘汰の理論は、なぜヒトがこのようなたわごとを信じるかを説明してくれる。
ハーバード大学の進化生物学者ケビン・フォスターはこういう。
「原因と結果の間に誤った結びつきを見出す傾向―迷信―は時として有効である。」
「たとえば、有史以前の人間は音を立てている草で捕食者の接近を連想し、隠れるかもしれない。ほとんどの場合においては風が音を立てただけだろう。しかしもしライオンの群れがやってきているのだとしたら、そこから逃げ出すことには巨大な利益がある。」とフォスターは言う。
進化心理学分野(ヒトの心理メカニズムの多くは進化生物学の意味で適応であると仮定しヒトの心理を研究するアプローチ)の最近の研究成果によって、ヒトの持つ性質に対する遺伝的な影響についてそれなりのデータが蓄積されつつある。
その中で私が特に関心を引かれたのがこの、ヒトの持つ迷信という心理的な働き(原因と結果の間に誤った結びつきを見出す傾向)についての研究だ。普段からこのブログを読んでくれている人なら、疑似科学を信じてしまう人達にこの性質が当てはまるケースが多数存在することが容易に理解できるだろう。
単純化された振る舞い
幸運のウサギの足からマヤの数秘術に至るあらゆる迷信を可能な限り正確に記述するよりも、フォスターとコッコは、動物とバクテリアさえ含む迷信の単純な定義と数学言語を用いて研究を行った。
彼らは迷信が適応的である情況をモデル化した。迷信を信じることによる損失が真の関連性を失うことによる損失よりも少ない限り、迷信的な信条は支持される。
「一般的に、動物は正しい振る舞いのコストと間違った振る舞いのコストのバランスをとらねばならない」とフォスターは言う。
「風ではなく本物のライオンがカサカサと音をたてている可能性を投入すれば、あなたは迷信的な信条を予測することができる」
複数の潜在的な"原因"がある出来事の前兆となる場合、正しい関連性と間違った関連性はさらに分別が付かなくなってしまう。カサカサなる葉と、例えば満月がライオンの到来に先立つかもしれないとき、一つの"原因"がそうするよりもいっそう迷信の方向へバランスを傾ける。
これが迷信が成立する基本モデルである。
フレーザーの呪術理論との関連性を見ても面白いな。
私の個人的見解では、この迷信モデルが成立するパターンは大まかに分けて以下の3通り考えられる。
1.迷信を信じることによる損失がほとんどなく、また正しい知識を持たないことによる損失も小さい場合。
陰謀論系統がこの代表事例に当てはまる。
動機となる感情が「正義感」や「善意」であるあたりが困りもの。
アポロ陰謀論だのケムトレイルだの、主張者は陰謀論の真偽に関わらず別に大したリスクを追うわけじゃないし(精々周りから白い目で見られ友人がいつの間にかいなくなる程度)、正しい知識を得たからといって何か得するわけでもない。
以前911陰謀論関連で、きくちさんが連中を「陰謀論をもてあそぶ人」と批判していた。実際に彼らはリスクを負う覚悟なく、その自覚もなく陰謀論をもてあそんでいるが、それだけでなく彼らは自分の心理的特性を把握せずに「安易に信じる人」でもある。
2.迷信を信じることによる損失がほとんどなく、逆にそれを信じることによるメリットがあると当事者が思い込む場合
代表事例としては「水からの伝言」が挙げられる。
水伝信者のお決まりの主張「科学的には間違っているとしても、道徳的に云々」という奴を知っていれば納得できるはずだ。
実際には「私はネギを背負ったカモです」と主張するに等しいわけだが。
インチキ医療系や水商売もこの系統に入るか。
3.正しい知識を手に入れるためのコストが高すぎ、逆に迷信を手に入れるコストが十分安い場合
疑似科学全般がこれに当てはまる。
科学が高度化、専門化するにつれて個人がその全体像を把握することは不可能になりつつある。
ただ一つの専門を突き詰めるだけでも長期間の高等教育を受ける必要があり、正確な知識に基づく判断力を手に入れるのは並大抵のことではない。
一方で疑似科学の特徴は、素人でも理解できる簡単な論理と明快に白黒つける断定だ(無論それが正しいことを意味しない)。
科学と疑似科学のどちらを選ぶべきかを判断できるだけの情報を持たない人間が、入手コストの差によって一定数疑似科学に流れることになる。
この迷信モデルは現代でもかなりきれいに成立しており、例えば代替医療系統の数多くのインチキ医療行為などが2、3の複合事例となる。
現代では、迷信は代替医療やホメオパシー治療の信仰として姿を現す。
「おそらく彼らの大部分は何もしないが、一部は確実に問題を起こす」と彼は言う。
より数学的でない言語でではあるが、スケプティックマガジンの出版者であるマイクル・シャーマーは、このような信仰に対して似たような説明を提案した。
「我々の頭脳はパターン認識機械であり、我々が自然の中に見出したと考えるパターンによって、点をつないで意味を作り出す。ある場合においてはAは実際にBにつながっており、別の場合にはそうではない」と彼は言う。
「つながりがない場合には、我々はつながりがあるものと思考を誤る。しかし、ほとんどの場合、このプロセスは遺伝子プールから我々を取り除きそうになく、そして、それゆえに、呪術的思考は常に人間の条件の一部である」
繰り返し書くが、ヒトが疑似科学的なものを信じる性質は生得的なものだ。
そうであるがゆえに、これをどうにかしようと思ったら、こうやってその正体を少しずつ丸裸にしていくしかない。
少なくとも相手が何者かを知れば、対策の立てようもあるからだ。
<9/13 タイポ修正>
作者:黒影
更新日:2008年9月12日 1時55分
理系と文系の研究対象の違い
少し前にはてブ経由でこんなエントリを見た。
Via はてなブックマーク - pêle-mêle - 原文、読んでる?
2007-08-22 - pêle-mêle:原文、読んでる?
昨日の日記のコメント欄でanotherさんは理系の学生は語学に興味が薄く、また英語至上主義が徹底しているので、「英語に似てるから」という消極的な理由で第二外国語にドイツ語を選ぶことが多いと述べていた。この時点でオレはどうにも悩んでしまう。理系では「論文を原文で読む」という習慣が重視されていないのだろうか。
文学・哲学研究では「お前、ちゃんと原文で読んでるのか?」がひとつの殺し文句になっている。この時点で原文を読んでいない者は「負けました」と頭を下げて投了するしかないのだが、理系ではどうなのだろうか。
たとえば理学部数学科に籍を置いてポワンカレについて本格的に研究したい者なら、当然ながらフランス語を学び、ポワンカレの論文を原文で読むものだとオレは勝手に想像している。もしここで「理系の学問は普遍的・客観的なのだから、原文がどの国の言葉で書かれていても関係ない」と言われたら、オレは「あらゆる言語にはイデオロギーが内在しており、また数学だろうが物理学だろうが化学だろうが、その論文が書かれた時点での文化状況と無縁ではいられない。ゆえにポワンカレを学ぶのであればフランス語を学び、19世紀後半のヨーロッパの置かれた文化状況も研究しなければならない。そうした作業をネグレクトしてポワンカレの『理論』だけを研究するのは知的怠慢である」と反論するだろう。しかしこういう主張を繰り返す人間は「文化相対主義者」というレッテルを貼られ、ソーカル=ブリクモンようなひとから嘲笑されるのだろうか。それとも「そういうのは科学者じゃなくて、科学史家がやることだ」と諌められるのだろうか(オレのこうした書きかたも「安易なレッテル貼り」と言われるのかもしれないが、何しろ理系の実態をよく知らないので、こんなことしか書けないのだ)。
多分このブログを読んでくれている人なら「ちょっと待て」と思わず突っ込みが入る人が何人もいるんじゃないかと思う。
なぜならこの文章は理系と文系の「研究の対象の違い」についてかなり誤解している―もっと突っ込んで言うと、理系の研究対象を文系のそれと同じだと思っている―からだ。
はてブやコメント欄をのぞいてみたら、案の定既に何件かツッコミが入っていたんだが、それらを読んでもどうにもかゆいところに手が届いていないもどかしさを感じたので、こんな風にコメントしてみた。
blackshadow 2008/09/04 22:58
はじめまして
>ポワンカレの『理論』だけを研究するのは知的怠慢
多分理系と文系の流儀の違いを知っているかどうかでトコトンすれ違う点がこれなんでしょうね。
理系の研究というのは文字通り「世界の理(ことわり)」について行われるものです。
そして理系の観点から言うと、例えば『ポアンカレ予想』という理論は理系の研究対象になっても、『ポアンカレ』という人物は理系の研究対象になりえません。なぜなら『ポアンカレ予想』が正しいか否かを証明するに当たって、ポアンカレが当時何を考えていたとかどんな思想背景を持っていたとか当時の時代背景が予想の構築にどう影響したかとかいう情報は一切必要ではないからです。
理系の研究対象は「自然」であるがゆえに(数学はちょっと特殊ですが)、過去の研究の時代背景や人物がどうであろうが、その内容の真偽は同じ「自然」を研究することで明らかになります。同様に、理系のこの特性ゆえに、余計な情報を切り捨ててエッセンスである「理論」だけを取り出すことが可能です。むしろ必要でない情報をそぎ落として行って尚残るものこそ、理系の研究の基礎となるものですから。
そして、その基礎の上にこれまでは知られていなかった新しい自然の理解を発見し積み重ねていくことこそが理系の研究です。
一方で科学『史』の学問領域だと、こういった「理系の研究」では必要ない情報こそがむしろ重要となってきますけどね。
要は研究対象の違いです。
別に「文化相対主義者」とかそういうのじゃなくて、理系文系の双方の研究対象がまったく異なるものなんですよ。
もう少し細かく書いてもよかったかもしれないが、他所様のコメント欄に長文を投下するのもアレなので、シンプルにまとめてみた。
多分yskszkさんと私や他のコメンターの相違点というか、すれ違いの源は、ここに集約できると思う。
ここからは私の主観に基づく印象論だが、文系でこの手の誤解(というよりも、自分ならば研究対象とする情報があっさり切り捨てられてどうでもいい扱いを受けていることに対する反発と言った方が適切な気がする)を持っている人というのは少なくない感じがする。
単に研究対象がまったくの別物だから、必要となる情報も違うというだけの話なんだが。
コメント先のダイアリーは既に更新停止しているようなので、ちょっと自分用のメモ代わりにここに記録を残しておくことにした。
作者:黒影
更新日:2008年9月11日 22時33分
博士ネットワーク・ミーティング@京都
お久しぶりです。黒影です。
8月は出張や旅行であっちこっち飛び回っていましたが、9月に入りようやくちょっと落ち着いたのでブログの更新を再開しようかと思います。
今日はとりあえず肩慣らしということで軽い記事を。
先日「赤の女王とお茶を」のsivadさんがアナウンスされていたのですが、
9月23日に「博士ネットワーク・ミーティング@京都」なるものが開催されます。
京都なら地元なので参加できるし、ついでにアナウンスくらいはお手伝いをさせていただこうかと。
2008-09-23 - 赤の女王とお茶を:博士ネットワーク・ミーティング@京都、開催します!
2007年の第71回総合科学技術会議ではポスドク年限を制限する方針が提案され、また全国の理系大学院博士課程では学生の減少が一層加速しています。
はっきり言って今の日本、博士もポスドクも科学も研究も待ったなしの状況になっています。
私もあれやこれや書いている以上できる限りのことはしていきたいと思っていまして、今回NPO法人サイコム様協力の下、とNPO法人KGCの柴田代表そして株式会社フューチャーラボラトリの橋本社長をお招きし、博士・ポスドク・大学院生・テクノロジスト、その他科学や研究や知識労働に携わる皆様のネットワーキングの機会を京都で設けようということになりました。
こちらでご紹介されているドラッカーの指摘のように、知識労働による生産においては専門家のネットワークがなによりも重要です。
個人のライフハックも大事ですが、一つの専門から社会に生み出せる価値は限られてきます。
特にライフサイエンスに代表されるサイエンス・ビジネスでは多分野の専門家による「すり合わせ」型の仕事が必要不可欠なのです。
というわけで、私もさっき参加申し込みのメールを出してみました。
要項は以下のとおりです。
もしこのブログの読者で他に参加する方がいたら、当日会場でお会いしましょう。
…既に定員オーバーでなければ。
SciCom Japan Information: ”博士ネットワーク・ミーティング@京都”開催! 08年9月23日
”博士ネットワーク・ミーティング@京都”開催! 08年9月23日
2007年の第71回総合科学技術会議ではポスドク年限を制限する方針が提案され、また全国の理系大学院博士課程では学生の減少が一層加速しています。
一方で、現代と未来の生活を支えるために科学・技術が必須であることは論を待ちません。
日本におけるこの矛盾は、科学や技術、研究に携わる人たち個人の力不足というよりは、欧米のような人的ネットワークを持たないゆえの社会力の不足にあるのではないかというのがサイコムの問題意識の一つです。
もちろん日本学術会議のようなトップダウンによる組織はすでにありますが、アメリカのAAASを見ても分かるように、やはりボトムアップの組織こそがこれからの世の中を動かしていくのではないかと考えています。
そこで私たちは、博士を初めとする知的生産に関わる人たちのネットワークをボトムアップで作っていくための交流会を今月、京都で開催することにいたしました。
博士ネットワーク・ミーティング@京都
日時 :2008年9月23日(火曜、秋分の日、祝日) 13:30~15:30
会場 :ちおん舎 http://www.usaato.com/info-map/chion-map.html
会費 :社会人3000円 学生1000円
パネルディスカッション「博士の使命と日本の未来」を予定しています。
パネリストとしてサイコム代表榎木をはじめ
株式会社フューチャーラボラトリ社長 橋本昌隆氏
特定非営利活動法人KGC代表 柴田有三氏
他をお迎えして日本の将来や知的環境に関する議論を行います。
今後につながるネットワーク作りを志向していますので、当日は出来る限り名刺持参での
交流をお願いしたいと思います。
仕事や研究のための人脈形成、異分野との交流、知的刺激の追求、志の共有などさまざまな目的を持っておいでいただけると嬉しいです。
参加希望の方は
hakasenetwork@gmail.com(@を小文字に変えてください)
へタイトルにミーティング参加希望と明記の上、メールで申し込みをよろしくお願いしま
す。
一次締切を9月13日とします。
皆様の参加を心よりお待ちしております。
なお、「博士」と銘打ってありますが、対象はネットワーキングと科学・技術・研究に関心のある学生・社会人の方も含まれます。博士号取得者や博士課程在籍者に特に限定いたしませんので、お気軽にご参加ください。
なお、サイコム会員は無料です。
準備を手伝っていただける学生さんを数名募集いたします。お手伝い願える場合は会費をいただきません。
<9/11追記>
とりあえず無事申し込みに通りました。
今回の取りまとめ役はsivadさんがされてるんですね。
まだ枠は余っているらしいので、関西方面でお時間のある方は是非どうぞ。
作者:黒影
更新日:2008年9月9日 22時9分